2021.4.25 JYUKU生の皆様へ 知っているようで知らないこと
JYUKU生の皆様へ 非常事態宣言が出て又、動きづらくなってきました。 良い機会ですので、近年、庭園樹でもアカマツやクロマツを中心に被害が増えていますので、生態を整理、防除に一番良いタイミングをさぐっています。 昨年から話題に取り上げて追跡調査をしている自然界での「マツモグリカイガラムシ」の生態追跡です。幸い、4月9日と19日の観察では管轄している庭園は防除が功を奏して、今年はほとんどマツモグリカイガラムシの卵のうがゼロの状態です。教科書では1年に2世代繰り返し、成虫は春と秋にに出現、吸汁害により枝の下垂(フラッギン)や枝枯れを発生さすとありますが、庭園では景観を損ね樹勢衰退の原因にもなり、重点管理項目となっています。
マツモグリカイガラムシの吸汁被害を受けた枝です。、下垂(フラッギング)、ねじれ、旧葉の変色、脱落が見られます。よく観察すると枝の表面の凹凸などもみられます。
その生態を確認した写真を紹介します。
卵のうです。(これは目に付くので確認が容易です)
卵のうの形成は♀成虫が産卵と同時に体全体から白い綿糸状物質を出しながら卵のうを形成していきます。(神的的な動画あり)
卵のうの中は、卵が200個以上です。
孵化し卵のうから脱出した直後の1齢幼虫です。
♂中間齢(2齢)・♀2齢幼虫です。(カイガラムシの状態です)写真伊東樹木医提供
3齢幼虫まで♂♀の外形はほとんど変わりません。(雌は2mm前後。雄は1mm前後です。) 球形のカイガラ状態から脱皮した 雄は雌のほぼ半分の大きさで、その後、蛹になり「まゆ」を形成します。下の写真は「まゆ」です。(この写真では成虫の脱出痕跡があります)
♂の成虫です。(有翅)
♀の成虫です。中間齢より脱出後、産卵場所を求めて移動、交尾が終われば産卵しながら「卵のう」を形成します。 最初の写真に戻ります。これを2回/年繰り返えしますが、地域により発生時期が異なります。
昨年の4月には、上記の♀成虫を持ち帰り、観察中に産卵の瞬間と卵のう形成その後、孵化を確認、記録する事が出来ました。カイガラの状態が成虫と思い込んでいた時期もあり「知っているようで知らない」ことを改めて認識した案件で、現場、現物、自分自身で確認するのにまる1年かかりました。
生態一覧表(写真付き)が出来ましたらJYUKU生の皆様には配布します。防除に役立てて下さい。
マツモグリカイガラムシの生活環